
日本酒を造る人は納豆が食べられないってたまに聞くけど、それって本当なのかな?

そうですね。では今日は酒蔵と納豆の関係を解説していきましょう
蔵人の気配りが日本酒を造る
日本酒は日本の伝統的なお酒のひとつであり、約千年以上も前から作られてきたとされています。
あまりにも古いその歴史から、正確な日本酒誕生の時期は未だ判明していません。
そんな日本酒の醸造は、日本の気候と風土、素材と技術、そして酒蔵の職人たちの努力と熱意によって成り立っています。細かい気配りや努力、更には食生活や体調管理にも気を遣うことが求められます。
「納豆が食べられない」は本当だった!
酒造りにおいて、微生物のバランスはとても大切です。
日本酒造りには麹菌・酵母菌・乳酸菌などさまざまな微生物が関わっており、それぞれの働きが酒の風味や品質に大きな影響を与えます。それら微生物のバランスが崩れると、不純物の混入や酒の品質の劣化、発酵不良などの問題が生じる可能性があります。
酒蔵での職人たちの食生活は、古くから厳しく管理されてきました。冬場に住み込みで酒蔵で働いていた人々は蔵内の微生物のバランスを保つため、特定の食品を避けたり、食事の時間を決めたりしていました。納豆はその代表的な避けるべき食品の一つであり、蔵人たちは納豆を食べないことが一般的だったのです。
つまり「蔵人が納豆を食べてはいけない」というのは本当でした。
現代では“蔵の中で共同生活する”という酒造りの形が薄まっているため、全く食べられないという訳ではありません。ですが、万全を期して酒造りに臨むために酒造りシーズンには意識して納豆を避ける蔵人が多いようです。

納豆好きな人には辛いかも……
食べられない理由は「納豆の菌」
さて、それではなぜ納豆が酒造りに悪影響を及ぼすのでしょうか。
納豆に含まれる微生物の一つに「枯草菌(こそうきん)」があります。枯草菌は納豆の特徴的な匂いや風味をつくるのに重要な役割を果たしており、さらに腸内環境を整える働きなどを持っています。健康に良い影響を与えることが知られている特徴的で強い菌です。
ただし酒造りにおいては、このような強力な微生物が問題となることがあります。
酒造りに必要な微生物は麹菌・酵母などの特定の種類に限られ、その他のものが混入すると酒の品質が悪化する場合があります。枯草菌は発酵食品に含まれる優秀な菌ですが、酒造りの過程で混入することがあると、アルコール発酵の進行が阻害されたり風味や品質に影響を及ぼす恐れがあるのです。
他にもあった?蔵人が避けるモノ
日本酒造りの職人は昔、季節労働者として酒造りの時期になると各地の酒蔵で働き、造りの期間が終わると故郷に帰って農業などを行なっていました。
彼らは「杜氏集団」と呼ばれ、代表的なもので新潟の杜氏は「越後杜氏」岩手の「南部杜氏」兵庫の「丹波杜氏」が三大杜氏として数えられています。
杜氏集団は冬の間、酒蔵の中で共同生活しながら酒造りを行います。
そのため蔵での食事において、酒造りに悪影響を及ぼす可能性のある食品を避けることが求められました。納豆以外にも極端に香りの強い食材、刺激物などは避けられていたようです。
また、酒蔵内での食事には、食事の時間や量にも注意が払われます。
特に酒造りのピーク時である冬場の仕込み期には、蔵人たちは長時間の作業を行います。食事をしっかりとることが必要ですが、過剰な食事やアルコールの摂取は作業効率や健康に悪影響を与えることがあるため、注意が必要でした。
習慣は蔵人の心構え
酒造りには古くから蔵人たちが守ってきた習慣や風習があります。
例えば酒蔵に神棚が設置し、神社で行われるような祭礼や祈祷を行うこともあります。また、特定の日に酒蔵での作業が禁止されることもあります。
これらの習慣や風習は、日本酒の醸造における蔵人たちの心構えや思いを表しています。
日本酒は古くから神事や行事などの宗教的な儀式や食事とともに飲まれてきた歴史があります。
そのため、酒蔵で働く人々には「身体を清め、神聖な場所である酒蔵内で清らかな作業を行う」という意識が根付いていました。
その一環としての意味でも、酒蔵で過ごす職人たちの生活は厳しく律されてきたのです。
まとめ
「日本酒を造る人は納豆が食べられない」という話の背景には、日本酒の品質に関する蔵人たちの継承された知恵や意識があることが分かりました。
こういった高い意識が現在の日本酒の質を支えていると言えるでしょう。

でも納豆のおつまみは日本酒に合うんだよなあ〜

発酵したもの同士、味の相性が良いのかもしれませんね